大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 平成11年(ネ)1178号 判決

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、金七八七万三五三三円及びこれに対する平成一〇年四月一四日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

二  被控訴人

主文同旨

第二  事案の概要

本件事案の概要は、次のとおり加えるほか、原判決の「事実及び理由」の「第二事案の概要」(原判決三頁五行目から一五頁九行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決七頁九行目の次に行を改めて以下のとおり加える。

「(当審における追加的請求原因に対する反論)

郵便法六八条、七三条は、郵便局職員の故意又は重過失があった場合にこれらの規定の適用を除外するものとはされていないから、控訴人の主張は独自のものというべきである。

したがって、郵便法六八条、七三条は、国家賠償法五条の「別段の定め」に当たり、民法規定の適用は排除され、本件の配達業務に民法七〇九条、七一五条が適用されることはないから、控訴人の主張は失当である。」

2  原判決九頁二行目の次に行を改めて以下のとおり加える。

「(当審における追加的請求原因)

郵便法六八条、七三条の解釈においては、少なくとも郵便局職員の故意や故意と同視すべき重過失によって、遅配、延着等の結果が発生した場合には、被害を受けた者に対する損害賠償責任を免責することを許すべきでない。その場合、郵便法の右規定は国家賠償法五条の「別段の定め」には当たらないから、民法規定の適用は排除されないと解すべきである。

本件では、郵便局の職員が、被控訴人の郵便事業の執行につき、特別送達すべき郵便物である本件差押命令を、故意又は重過失によって私書箱に投函した違法行為(民訴法一〇三条違反)により、控訴人が損害を被ったことは明らかである。

よって、被控訴人は、国家賠償法四条、民法七一五条の使用者責任に基づき、控訴人が被った損害を賠償すべき義務を負う。」

第三  判断

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決二一頁五行目の次に行を改めて以下のとおり加えるほか、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」(原判決一五頁末行から二五頁二行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

「(当審における追加的請求原因に対する判断)

控訴人は、郵便法六八条、七三条の解釈においては、少なくとも郵便局職員の故意や故意と同視すべき重過失によって、遅配、延着等の結果が発生した場合には、被害を受けた者に対する損害賠償責任を免責することを許すべきでないと主張し、無限定に被控訴人の免責を認めることによる不合理な結果や、郵便配送業務が私人間の物品運送契約に基づく業務と実質的に異ならないとして、故意又は重過失ある運送人に損害賠償責任を負わせる商法五八一条の規定との均衡を指摘する。

しかし、郵便法六八条、七三条は、いずれも郵便局職員に故意又は重過失がある場合であっても、その適用を除外する旨を定めていないことに加え、前記のとおり、郵便法が第六章「損害賠償」として六八条以下に規定を設け、損害賠償をなすべき場合、その賠償金額、請求権者をそれぞれ限定している趣旨に照らすならば、いかなる場合に被控訴人の免責に例外を認めるかとか、故意又は重過失ある運送人に損害賠償責任を負わせる商法五八一条の規定との均衡をいかに調整すべきかなど控訴人指摘の点は、立法論としてはともかく、控訴人の主張は、現行郵便法の解釈としては無理があるといわざるを得ない。したがって、控訴人の主張は採用の限りでないから、その余の点(郵便局職員の故意又は重過失)について判断するまでもなく、控訴人の国家賠償法四条、民法七一五条の使用者責任に基づく、損害賠償請求には理由がない。」

二  結論

以上によれば、控訴人の請求は、理由がないから棄却すべきである。よって、原判決は相当であって、控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(編注)第1審判決及び第2審判決は縦書きであるが、編集の都合上横書きにした。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例